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ESSAY(2002年8月)|高田明美オフィシャルホームページ ~ Angels ~

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ESSAY

2000年に立ち上げた旧公式サイトの日記を移転しました。今後の更新は、特別に残しておきたい思いがあった時に書くかも?

2002年8月

  • <ご来場ありがとうございました>2002年08月09日

     今回展示の銅版画は、4月から断続的に創り続けてきた6点 リメーク1点の計7点。掲示板に書いたものを、会場でご覧にならなかった方のためにも、ちょ っと補足して解説します。あまり、皆さんに馴染みのない銅版画がメインの展覧会でもあり、技法的に興味をもたれた方も多かったようです。会場でも、話し相 手がいれば、ついつい嬉しくて解説してしまった私。猛暑と雷雨にたたられる中、それでも会場にいらしてくださった皆さんに感謝しています。

     道具も薬品も使用する物が多く、手順も煩雑な上に、裏焼きの状態で絵を創っ て行かなくてはならず、しかも始めは刷ってみるまでどうなっているのかわからない。いくつものハードルを越えていかなければならない技法です。敷居が高い と言えば言えるのですが、やってみると面白くて、私のような面倒くさがりでも、思わず没頭してしまうところがありました。

     とりあえず、制作順に解説していきます。

    ■「ねがい」*横5.7cm×縦6.9cm(サイズはイメージ部分のみ)
     ウォーミングアップも兼ねて、まずは小さい物から‥‥横顔の少女が手のひらをあわせて、何か見上げるような構図です。

    ■「孵華」*横8.7cm×縦13.6cm
     「ねがい」が横顔だったので、正面向きで。サイズも葉書くらい。花が開いて目 覚めた時のイメージで創りました。バストショットの絵です。

    ■「Nike」*横17.4cm×縦14.0cm
     掲示板でもご指摘がありましたが、"サモトラケのニケ"のイメージです。まだま だ時間があると思い、勢いよく銅版画の大きな作品をたくさん創るぞっ、という意気込みです。創っているこちらも希望を持って新しい旅へと船出する気持ちを 表しています。海風に帆を張るように拡げた翼(に見えるドレス?)、遙か彼方を見るまなざし。ウエストのあたりまでの絵。この絵だけ横位置です。

    ■「Fiorentina」*横14.0cm×縦17.4cm
     元気よく目線が来ているのと、意気揚々とした気分の絵を描いたので次はしっと りしたの‥‥と思って創りました。「Baroque Angel」と並行して作業しました。うつむき加減の花の精。羽根のようなアラベスクのような、大きなウェーブ の髪。胸にもアラベスクのような飾りの付いた深いローズのドレスを着ています。ローズとセピアの2色刷は、一度、中央の赤い部分のインクを版に詰めて、 目の粗い堅い布でざっと拭き取ります、次に周囲のセピアのインクを詰め、洋服の裏地のような布で仕上げ拭きをします。この時2色を若干馴染ませるように拭 き上げていくのです。私は気付かずに描いていましたが、クリィミーマミの面影があると言われました。なるほど、知らずのうちに出てきてしまうんですね。

    ■「Baroque Angel」*横17.5cm×縦17.7cm
     さすがに、揮発性の溶剤を大量に使う作業に、身体が弱ってきました。一寸疲れ たので、絵も一休みの寝ポーズです。ドレスの1部が翼のように見える精霊のような女性が眠り、金色の蝶がふわふわと寄り添っていく"胡蝶の夢"のイメージ。 蝶とその周囲だけ金色、他はセピアで刷りました。

     ここで銅版画の作業は、いったんお休み。この展覧会のイメージイラストの 「翔宇宙」を描きました。B3縦サイズです。銅版画が並ぶと会場の色彩的には地味かな、と思って思い切りあでやかな色を使って明るい絵を描きました。現在 のこのサイトのTOP絵です。会場に原画が飾られているとばかり思っていたのですが、考えてみると開催前日の7月31日に最終の色校正を終えたばかりでし た。つまり、原画は会期中まだ工房にあったわけ‥‥掲示板の方で間違った情報を書いてしまってごめんなさい。

    ■「Gothic Angel」*横17.5cm×縦17.7cm
     新作は7点創るつもりだったのですが、結局これで時間切れになりました。白い イメージの女性が多かったので、バリエーションとして黒衣で髪も羽根も黒い女性を創りました。「Baroque Angel」とは対照的に、くっきりした顔立ちの女性 が膝を抱えるように浮かぶ姿。全身が入っているのはこの絵のみです。けっこう難航して、思ったような表情が出ず、10日間いじっていた版を捨ててやり直し ました。でも思い切りよくやり直して良かったと思っています。版の完成度も一番高いのでは?会場に訪れた友人達に採ったアンケートでは1番人気でした。

    ■「華」*直径8cm丸形
     当初はこれまで制作した銅版画も一緒に展示する計画もあったので、以前の版を出してきてみました。花の様にひろがる髪の少女のアップ、正面向き。今回の集 中制作で自分自身のスキルが上がって、版面を見るだけで刷ってみなくてもある程度刷り上がりがわかるようになってきました。そこで、刷る前に一寸手を入れ て見たところ、とても良くなっていたので、改めて販売用に出品することにしました。刷り色を緑から赤に変更し、エディションも始めから付け直しました。銅 版画は刷り色を変えると別作品として認められているのです。版に手を加えたことによって、華やかさが増したので赤が似合うようになりました。

     この展覧会は妹でもある高田美苗との初の2人展でした。横5.7cm×縦5.7cmの星座シリーズは12点もあり、非常にバラエティに富んだ世界です。人物を描い た作品も、私とは違った個性があって、2人で開催することによって、より拡がりのある世界が生まれたように思います。いらした方は2人の個性の違いを楽し んでいただけると嬉しいです。

     今回ご覧にならなかった方も、いずれ全国のアールビバンの常設ギャラリー、アートスクエアで巡回展の予定がありますので、お近くで開かれる時は是非いら してくださいね。銅版画の質感は印刷やモニターでは感じることが出来ない、本当にアナログな世界です。また、会場でお2人から馬を描いた銅版画が欲しかっ た、とリクエストがありました。私も実は時間があれば創りたいと思っていたので、次の機会には是非。また、制作してみて、どんどん自分のインナーワールド に入っていくのが銅版画の世界だと感じました。サイズ的にもそう大きな絵を創るのはむずかしく、まさに"掌の上の宇宙"です。
2002年8月
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