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■ESSAY :March 2000

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高田先生の「気まぐれ更新日記」です。

<絵を描く“わたし”>Date: 2002.1.14

 私が絵を描くことはもう自明のことのように思っていた。だから、ただその事で、人が感動している姿を見るのは不思議で新鮮な驚きだった。

 年明けの旅行は、それ自体でひとつのホテルになっている南の海の小さな島での滞在。決められた時間内に朝昼晩の食事をとるレストランにドイツから来た一家の姿があった。目に付いたのは小さな金髪の男の子。両親の散歩中、ひとなつこくスタッフに手を引かれて歩き回ったり、一人で走り回ったり、サンドカーペットで砂遊びをしたりと、ちっともじっとしていない。いつもお友達のテディベアを連れて歩き、スプーンですくったものを、まずテディベアの口のところに持っていってから自分の口に入れる動作が可愛くて、いつもこっそりと目の端で見ていた。

 夜の桟橋に集まる魚の写真を撮ろうとビデオカメラを持って夕食に出かけた時、私の座った席のそばにその子がやってきて、可愛くおしゃべりをし、唄っているのを、ついつい盗み撮りしてしまった。後ろにいる両親に不審に思われたかも‥‥と考えた私は、私自身のやり方で「怪しいものではない」と証明しようと思った。それはその子の絵を描くこと。仕事をしようと持っていったのに、全く使わずにいた紙を出し、ビデオを見ながら簡単なスケッチを仕上げる。

 翌日の夕食の時、勇気を出して食事中の一家のお母さんに、彼に贈り物だと言って渡す。その時の彼女の驚きと喜びの表情、それを見た私の感動は、ちょっと言葉では言い表せない。「本当に信じられない、美しい!」と繰り返す彼女の姿に、絵とはこれほどストレートで強いコミュニケーションの手段だったのかと、改めて思い知った。今年初めて描いた絵が、言葉を越えて人の心に響くのを目の当たりにし、私の「絵で世界中の人に愛される」という願いは、幸せな「初夢」となって新たな1年を始められる気がした。

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